2010年04月14日

「送付」という言葉

以前、「送付という言葉は、『送りつける』と書くように、ぞんざいな言葉である。だから、ビジネスの場で使ってはならない」と、そういう主張を、複数のサイトで見た記憶がある。
はたしてそうだろうか?
試しに辞書を引いてみると。
「品物や書類を送りとどけること。〔改まった言い方〕」(学研国語大辞典)
「品物や書類を送り届けること。「請求書を─する」」(明鏡国語辞典)
と、いずれも、ぞんざいな言葉だという解釈ではない。
学研の辞書などは、わざわざ、「改まった言い方」とまで断っている。

漢和辞典で、「付」を引いてみると。

{動詞}手渡す。▽相手の手中にぴたりとつける意から。
{動詞}相手にくっつけて任せる。たのむ。また、預ける。
(いずれも、学研漢和大字典)

とある。
さらに、「つける」を引くと、
「動作の勢いが激しい意を表す。強い勢いで…する。「打ち付ける」「たたき付ける」「どなり付ける」「叱り付ける」」
(学研国語大辞典)
が、「送りつける」の意味としては該当する。
しかしながら、この意味での使用は、「接尾語」であって、熟語の成り立ちとして、動詞+接尾語という組み合わせも不自然である。

また、万一、「送付」という単語の元々の意味が、「送りつける」であったとしても、たとえば、「貴様」という単語の元々の意味が、尊称であったとしても、現時点においては、「ビジネスの場で使ってはならない」のと同じで、どこでどう言葉を使用するかは、その時点における意味づけを考慮すべきであろう。

同じように、お客様からのメールに「了解しました」と返すのは失礼だとも書かれていた気がする。
辞書を引いてみると。
「理解して承認すること」であり、承認とは、「〔同意して〕みとめゆるすこと。聞き入れること」(いずれも、学研国語大辞典)との解釈が見られる。
なるほど、これは、失礼であろう。
posted by 麻野なぎ at 21:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑感・ことば
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